金融所得課税について

事の発端は、富裕層が行っている株式担保(株式を担保に借り入れする)です。実は富裕層は税金を払っていません。金融所得課税の20.315%すら払っていません。所有している株式を担保にしてお金を借り入れるんです。1000万円の価値のある株式を銀行に担保し、借りたお金で生活しています。そして返済時期になるとその株が1年後に2000万円になっていたとすると、1000万円を返しますが、担保の株の価値が2000万円に上がっているので、更に再び1000万円を借りることができます。このケースの場合、税金を払わずに銀行に支払うわずかな金利だけです。このようなことを防止するために金融所得課税を導入するという趣旨です。

ただ、これだけだと彼らが税金を払わずに私腹を肥やしていると思ってしまいますが、そのお金を事業に回したりなどもしています。よりチャレンジングな投資ができる。だから雇用も維持できるし経済ももっと発展します。

更に、銀行の貸出し総額が大きくなり、貸出金利をもらえて銀行も潤います。ということは、一般庶民も安い金利でお金を借りられることになります。お金持ちが沢山金利を払って銀行を潤すことによって私たちも住宅ローンの金利も低くなります。

ただこれが金融所得課税が導入されて、金持ちが株式担保でお金を借りるのが難しくなれば、逆に銀行の全体の貸出し総額が減り、銀行は貸し出し先をより慎重に選ぶようになります。ということは既存の優良企業に優先的に貸し出すようになります。

そうなると金利が上がり、私たちの住宅ローン金利も自動車ローン金利なども全て上がります。つまりこれは緊縮財政です。一見すると、金融所得課税は富裕層から貧困層へお金が流れるようなイメージですが違います。富裕層から超富裕層への資金の移転です。

財務省が参考にしている政策研究所のレポートにも明確に書かれています。金融所得課税を強化する。そのための方法としてこれこれが良いんじゃないかということです。財務省としては金融所得課税を推進したいんです。

仮に、金融所得課税が導入されると、銀行に担保している株式にも税金がかかることになります。しかし富裕層はその税金を支払えません。なぜなら富裕層は現金をそこまで保有していないからです。富裕層の資産ポートフォリオの割合は、現金よりも株式や不動産の方が圧倒的に多いんです。

そうなると、担保の株式の何割かを売却することになります。そうすると、その株式を貴族層が購入していくわけです。持っている資産が金融資産よりも非金融資産の割合の方が多ければ貴族層、その逆が富裕層と位置付けられます。税金対策の方法も全く違ってきますし、適用される税法も異なります。

金融資産(株式)の含み益に対して税金をかけていこうというのが今回の金融所得課税の発端です。貴族層からすれば、痛くも痒くもありません。

お金の総量が決まっているとしたら、金持ちになる方法は一つ。富裕層の持っている資産を貴族層に移すこと。若しくは富裕層の持っている資産を消してしまうことです。貴族層からすれば「お金持ちは増え過ぎたよね。権力を持っている人が増え過ぎたよね。だからこの辺で潰しておこう」ということです。

◆金融資産とは

  • 現金預金
  • 債券
  • 株式
  • デリバティブ
  • 投資信託
  • 保険契約

共通点は、市場や経済に大きく依存してその価値が上下するということです。そして、多くの富裕層は自身の保有するポートフォリオの大半を金融資産で賄っています。

◆非金融資産とは

  • 不動産
  • 事業資産
  • 知的財産
  • 特許権
  • 著作権
  • 芸術品
  • 宝石
  • コレクション
  • 自然資源

貴族層の保有するポートフォリオにおいて、金融資産はもちろんありますが、非金融資産の割合が非常に多くなっている訳です。REITは金融資産、実物は非金融資産にカテゴライズされます。なので、同じ資産にしてどういう形式で持つかによって税金のかかり具合が変わってくる訳です。

◆貴族層とは
法的・権力的に貴族とされるのは、ヨーロッパの封建制度のように「男爵」「侯爵」などと社会的に位置づけることもできますし、政治的な権力を持っていることによって定義づけることもできます。

一方、社会的・文化的に受け入れられている場合も貴族層と定義づけられます。例えば代々同じ資産を受け継いできた人たち、富と資産を世襲してきた人たちです。社交界でもそれなりの力を発揮します。

そして経済的な貴族層を位置づけることもできます。非金融資産を大量に保有しているという状況です。土地、起業、芸術品、宝石品、骨董品など、財団や信託で税金を最小に抑えることができます。日本では政治団体を使えば相続税は1円もかかりません。ということは、世襲政治家たちも貴族層です。

これらにように、資産のメインが金融資産なのか、非金融資産なのか、相続において0円で受け継ぐことができるのかなどの要因によって、貴族は昔よりも広い定義で考えることができます。

大企業のオーナー系も貴族層です。例えばロスチャイルド家、ロックフェラー家なども貴族です。

このように貴族を紐解くと、金融所得課税で成し遂げたい全体像が見えてくる訳です。富裕層から一般層、低所得者層にお金が流れるのではなく、富裕層から貴族層にお金が流れる若しくは富裕層のお金が消滅していくということです。

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